なぜ新株予約権の評価が必要なのか?

 新株予約権とは「将来ある一定の金額(行使価額)で株を購入する権利」のことで、大きく分けて、役職員等に対するインセンティブ目的で発行されるストック・オプションと、資金調達を目的として発行されるものとがあります(注)。
 新株予約権の評価とはこの「権利」自体の価値を評価することで、株の価値を評価する株価算定とは異なります。
 (注)よくいただく質問「新株予約権とストック・オプションは何が違いますか?」に対しては、「インセンティブ目的で発行される新株予約権をストック・オプションと呼んでいる」という回答になります。

ストック・オプションの評価

 ストック・オプションには、無償で付与されるものと、付与対象者からの公正価値の払い込みを要するもの(「有償SO」といいます)があります。
 いずれであっても会計上の費用処理を目的とした評価が必要となります。また、有償SOであればその払込金額の評価が必要となります。
 会計上の費用処理を目的とした評価については、会社の採用する会計基準に従った評価が求められます。
 一方、払込金額の算定を目的とした評価については、有利発行か否かという点から会社法上の問題となりますが、会社法に規定はありません。また、税務上も問題となりえますが、税法等にも規定はありません。

資金調達目的の新株予約権の評価

 資金調達目的の新株予約権は行使価額の払込により資金調達を行うものですが、新株予約権自体の対価(行使価額の0.1%~数%程度と金額は僅少ですが)の払込みも必要となります。
 この新株予約権自体の対価についても、有利発行か否かという点から会社法上の問題となりますが、やはり会社法に規定はありません。

 資金調達目的の新株予約権は発行量が大量となることが多く、評価には市場の流動性に関する特別な想定を置くことになります。
 また、行使の進みやすさ等を考慮し、行使価額が変動したり一定期間内での行使が強制されたりといった条件が付されることもあります。評価にはそれらの複雑な諸条件を適切に反映させる必要があります。

第三者による評価の必要性

  • ストック・オプションの会計上の費用処理を目的とした評価は比較的容易なため、発行会社自身で評価を行うことも可能です。ただ、会計監査において、発行会社から独立した専門家による評価を取得するよう求められることが多いようです。
  • 有償SOの払込金額についても、意図せず有利発行に該当する可能性があり、発行会社から独立した専門家による評価を取得するほうが安全です。
  • 資金調達目的の新株予約権は評価が複雑であり、発行会社自身による評価は困難です。また、有利発行の論点についても有償SOの場合と同様です。上場企業であれば、当局との折衝のなかで第三者による評価が当然に求められます。

評価の費用感

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