「株価条件付きストック・オプションの評価」に関わる全般的な事項をまとめています。
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解析解を求める意義について
ストック・オプションには様々な株価条件が付されますが、比較的単純な株価条件については解析解が求まります。
「解析解」と言いつつも、紙と鉛筆だけで計算ができるものではなく、スプレッドシートやRの標準正規累積分布関数を使用して計算するものです。プレーンバニラの評価式であるブラック・ショールズ式さえも、標準正規累積分布関数を使用しないとが計算できません。
比較的単純な株価条件であれば、これらの解析解を使用して誤差なく評価を行うことができます。
また、より複雑な株価条件を二項モデルやモンテカルロ・シミュレーションで解く必要がある場合にも、それらの実装・計算結果の正しさを検証する目的で解析解が役に立ちます。
さらに、モンテカルロ・シミュレーションによる場合であれば、これら解析解を制御変量として利用し、評価額の「バラつき」を小さくすることができます。
バリア・オプションのハードル調整について
バリア・オプションの解析解は、株価がバリアにヒットしたか否かの判定を連続的に行う想定で導出されています。つまり、毎分毎秒(毎ミリ秒・・・)すべての売買を観察してバリアにヒットしたか否かを判定するイメージです。
そのため、株価条件を日次の株価終値や月次の最終株価で判定する場合、バリア・オプションの解析解をそのまま使用すると意図した評価となりません(過小評価になります)。
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バリアヒット時からの割引現在価値の近似式
解析解を求めることができない場合でも、近似的な解析解を求めることができる場合があります。
- 株価が〇円以下で行使が強制される(強制行使条項付き)
- 株価がある一定の水準となった場合に行使する想定を置く場合
の近似的解析解の導出において、「バリアヒット時からの割引現在価値の近似式」を使用しています。
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権利確定時期の見積もり
会計上の費用処理にあたり、(公正な評価単価に反映しない)権利不確定による失効の見積数を算出する必要があります。
株価条件の権利確定時期やその確率を見積もるため、「バリアヒット時からの割引現在価値の近似式」で使用する\( \mathbb{E}[\tau \mid 0\leq\tau\leq T] \)や\( \mathbb{P}(0 \leq \tau \leq T) \)を使用することができます。
2変量正規分布の累積分布関数について
満期までの期間の一部のみで判定を行うダウン・アンド・アウトおよびアップ・アンド・イン・オプションの解析解の評価にあたり、2変量正規分布の累積分布関数が必要になります。
一般的なスプレッドシートやRには2変量正規分布の累積分布関数は実装されていないようです。そのため、自分で関数を作成する必要があります。
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