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ストック・オプションの評価アプローチの選択
基本的には、表の通り評価アプローチを選択することになろうかと思います。
| 行使行動の仮定について | 公正な評価単価 | 払込金額 | |
|---|---|---|---|
| 実績 データ |
行使行動の仮定 | ||
| 日本基準 | |||
| なし | みなし予想残存期間 | ブラック・ショールズ式 (株価条件反映しない) |
株価条件を反映できるアプローチで、 行使行動の仮定と整合するもの (株価条件反映する) |
| あり | 実績から見積もった 予想残存期間 |
||
| 行使される株価倍率を想定 | ・二項モデル ・モンテカルロ・シミュレーション (株価条件反映しない) |
||
| IFRS | |||
| なし | 理論的に最適な行使行動を想定 | ・株価条件を反映できるアプローチで、行使行動の仮定と整合するもの ・特に配当による早期行使を反映できるもの |
公正な評価単価と同じ |
| あり | 実績を反映した 合理的な見積による |
||
日本基準の公正な評価単価
- 「株価が現在の○○倍になった時点で行使する」と想定する場合 二項モデルやモンテカルロ・シミュレーション
- その他の場合 ブラック・ショールズ式
IFRSの公正な評価単価
- 配当がない場合
- プレーンバニラの場合 ブラック・ショールズ式
- 株価条件がある場合 「株価条件付きストック・オプションの評価」で紹介する解析解や二項モデル、モンテカルロ・シミュレーション
- 配当がある場合、または配当がなくとも早期行使が起こりえる株価条件が付されている場合
- (早期行使を適切に評価できる)二項モデル
- 二項モデルでの評価が難しいものについては、株価条件の判定を近似的行う二項モデル、もしくは早期行使を想定するモンテカルロ・シミュレーション(いずれも近似誤差が発生)
有償ストック・オプションの払込金額
基本的には、公正な評価単価に準じるべきと考えられます。
資金調達目的の新株予約権の評価アプローチ
資金調達目的の新株予約権は発行量が大量となることが多く、評価には市場の流動性に関する特別な想定を置くことになります(ある一時点でその全量を行使する想定を置くことができない、市場での大量売却にあたり株価がそれに影響される、等)。
また、行使の進みやすさ等を考慮し、行使価額が変動したり一定期間内での行使が強制されたりといった条件が付されることもあります。
評価にはそれらの複雑な諸条件を適切に反映させる必要があり、基本的には、モンテカルロ・シミュレーションによることになります。
「モンテカルロ・シミュレーションで評価した」の意味
実務上、開示資料等で「モンテカルロ・シミュレーションで評価した」と記載せざるを得ない状況があります。
その場合でも、大前提として「株価モデルはブラック・ショールズモデルを前提とする」とする会計基準の考え方があり、「モンテカルロ・シミュレーションで評価した」は「ブラック・ショールズモデルに基づき、コンピュータ・シミュレーションにより評価を行った」ことを意図して記載しています。
ブラック・ショールズモデルとは異なる株価モデルを採用したのであれば、「モンテカルロ・シミュレーションで評価した」との記載は、なんらの説明責任を果たしたことになりません。